不在時に私の部屋へ侵入していたのは大家さんだった

私は今賃貸マンションに住んでいる。このマンションに引っ越すときに、私が一番チェックしたのが、間取りでも駅からの距離でもなく、管理人さんだった。もう、あんなに怖い思いは二度としたくないからだ。

今のマンションに引っ越す数か月前の話だ。私は賃貸アパートに住んでいた。単身者用のアパートにしては珍しく台所のコンロが3つもついていて、駅から近いにも関わらず家賃が安かった。しかも一階に大家さんが住んでいるということで、初めて一人暮らしをする私にとっては防犯面においても有難かった。そこに住んでしばらくの間はとても快適だった。誰に干渉されることもない。オシャレな出窓には大好きな動物のフィギュアを飾り、それらを眺めながらビールを飲むのが私の至福のときだった。

ところがある日、会社から帰宅して玄関に入った途端、何故だか部屋に違和感を抱いた。何となく、いつもの空気というか匂いが違うのだ。何となく警戒しながら部屋に入り、気配を探った。だけど貴重品が取られているわけでもないし、部屋に荒らされた様子もない。きっと疲れているんだ。そう言い聞かせてお風呂に入り、夕食の支度をして、テーブルに料理を並べた。そしていつものように喉を鳴らしながらビールを飲んだ。うん、いつもと変わらず美味しい。やっぱり気のせいだったんだな、と少しほっとしながら出窓のフィギュアに目をやった途端、私は氷のように固まってしまった。私には少し神経質なところがあり、動物の視線が必ず私の方に向くように置いている。ところが九官鳥のフィギュアだけが外を向いていたのだ。間違って置いたなんて絶対にありえない、誰かがやったのだ。誰が?――合い鍵を持っているのは大家さんしかいない。

翌朝、玄関前を掃き掃除している大家さんに遭遇した。ところが大家さんは逃げるように自分の部屋に入ってしまった。私は確信し、そして引っ越しを決意したのだった。